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​4. 効果的な方法

→偏らない

   [バランスの理解と実践]

発酵食品は、乳酸菌などの様々な細菌を含みます。乳酸菌などは、十分な量を投与した場合、宿主に健康上の利益をもたらす生きた細菌で、プロバイオティクス*Iとも呼ばれています。オナカの腸内細菌のバランスを整え、腸内の異常状態を改善(整腸作用)し、さらに、免疫を活性化させる作用もあります。但し、ヨーグルト(発酵乳)などの発酵食品に含まれる乳酸菌*Jは胃酸や胆汁酸などで殆どが死んでしまいますが、死んだ菌(死菌)も腸内細菌を活性し、腸内環境を改善する可能性があることが分かってきています。

*I. プロバイオティクス:腸内フローラバランスを改善することにより動物に有益な効果をもたらす生菌添加物[Fuller, 1989], *J. 糖類などを発酵してエネルギーを獲得し、多量の乳酸を生成する一群の細菌の総称

しかし、ヨーグルトをいくら食べても、その中の微生物が腸内で増殖して定着することはありません。人の腸内フローラには、人からもらった細菌しか定着しないと言われています。

乳酸菌の作り出す物質(代謝産物)と菌体の内外の諸成分が腸内環境を改善すると考えられますが、それがどのような仕組みで腸内フローラを活性化させるのか、まだ十分分かっていません。

「ヨーグルトはカラダに良い」と思って毎日食べて、調子が悪くなることもあります。ヨーグルトは動物性脂肪を含んでいるので、ヨーグルトから数十億個以上の乳酸菌を摂取しようとすると、動物性脂肪の摂り過ぎにもなります。

また、乳酸菌は、糖類を分解して乳酸を産生する細菌類の総称で、250種以上の種類があり、乳酸菌が生育するためには人間同様、複雑な栄養*Kが必要です。ヨーグルトの原材料である牛乳は、カゼインや乳清タンパク質、乳糖(ラクトース)が主であるため、これらを分解、発酵できる乳酸菌の一部しか生育できません。これらのことからも、特定の食材に偏りすぎるのもよろしくありません。

*K. 糖質やアミノ酸、ビタミン、核酸塩基など

発酵食品には、発酵(細菌が培養される)過程で、消化分解し易くしたり、その原材料となる食材自体の栄養価を高めたり、独特の風味を生んだり、長期保存性を高めたり、様々なメリットがあります。以上のことからも、普段の食生活では、多様な発酵食品の摂取が望まれます。

ちなみに、発酵も腐敗も、タンパク質や炭水化物などの成分が細菌の作用で分解されて起こる現象です。乳酸菌は糖類などから多量の乳酸を産生することで、食品のpH(ペーハー)バランス*Lを酸性に傾けることで、腐敗や食中毒の原因になる他の細菌の繁殖を抑え、発酵食品として長期保存を可能にし、私たちが食べることができる重要な働きをしています。

*L. pHとは、水素イオンの濃度指数のこと。酸性とアルカリ性の度合いをpH0~14の数字で表し、pH7を中性、それより小さい値は酸性に、大きい値はアルカリ性に傾いていることを指します。

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オリゴ糖や食物繊維は、オナカの腸内細菌が好んで食べ、有益な働きをし健康に良い影響を与えてくれる、人では消化しにくい食品成分で、プレバイオティクス*Mと呼ばれています。

*M. プレバイオティクス:大腸内の特定の細菌の増殖および活性を選択的に変化させることより、宿主に有利な影響を与え、宿主の健康を改善する難消化性食品成分[J. Nutr. 125: 1401-1412, 1995. ]

難消化性成分(難消化性の炭水化物やタンパク質など)はプロバイオティクス以上に医学的有用性エビデンスが多く揃っています。そのため、本スクールではこの難消化性成分である「ルミナコイド」に関する内容も充実しています。ルミナコイドとは、日本食物繊維学会が命名した、「ヒトの小腸内で消化・吸収されにくく、消化管を介して健康の維持に役立つ生理作用を発現する食物成分」 のこと。(下表:「ルミナコイドの分類」日本食物繊維学会)​

ルミナコイドの分類

そして、ルミナコイドを腸内細菌が食べることで生み出されるのが、短鎖脂肪酸(有機酸)です。主な短鎖脂肪酸は、酪酸、プロピオン酸、酢酸です。

[各短鎖脂肪酸の有用性]

 

酪酸:

・小腸の繊毛運動、大腸の蠕動運動を活性化

・腸管粘膜の傷を修復、粘膜物質(ムチン)の分泌を促し、大腸を保護

・大腸細胞の異常な増殖を抑え大腸癌の発症を抑制

・腸管ホルモンであるGLP-1の分泌を促しインスリン分泌を正常化(インクレチン効果)し、糖尿病改善

・腸管ホルモンであるGLP-1やPYYを分泌させ、脳に作用して過食を抑制

・過剰な免疫反応を抑えるTレグ細胞(制御型T細胞)という免疫細胞を増やす効果

​など

 

プロピオン酸:

・ Tレグ細胞(制御型T細胞)に作用し,腸管粘膜でのTレグ細胞の維持に寄与することで,大腸炎抑制に効果

 

酢酸:

・腸内pHバランスを酸性にし、有害菌を減らす

・大腸腸管上皮細胞のバリア機能を高め病原菌の腸管感染症を予防 

・食欲抑制効果

 

「②腸のぜん動(収縮)運動の適正化」の観点からも、その運動エネルギー源の多くを占めるのが短鎖脂肪酸*Nの一種である酪酸が重要になります。

*N. 短鎖脂肪酸は腸内細菌が難消化性成分を発酵し産生させます。短鎖脂肪酸には、酪酸、プロピオン酸、酢酸、乳酸、コハク酸、吉草酸などの複数種類があります。但し、乳酸、コハク酸は短鎖脂肪酸に含めないとする見解もあります。*(10)

 

この酪酸を効率的に産生させるには、レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)のような「酪酸の産生比率の高い難消化性炭水化物」を摂取する。大腸全域で発酵させるには、「分子サイズが異なることで、腸内発酵時間に差が出る、難消化性成分を複数組合せる」などを考慮することで、より効率かつ効果が期待されます。

腸内フローラは国毎の大きな特徴があることも分かってきました。​日本人には日本人特有の腸内細菌がいます。特に、オナカの中で短鎖脂肪酸や、抗酸化作用のある水素を生み出してくれる細菌たちは他にも有益な栄養を生み出してくれています。下図*(11)は、日本人と欧・米・中国等の外国11カ国の腸内細菌叢のメタゲノム解析(細菌叢の遺伝子解析)を比較したものです。

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また、腸内環境を整えるには、「腸内細菌を減らす危険のある抗生物質や添加物の削減」「腸内pH(ペーハー)バランスを整える」「腸内炎症を抑制する」「腸管粘膜を修復する」「腸内での未消化たんぱく質(分子量の大きいカソモルフィンやグリアドルフィンなどのペプチド)を減らし腸内腐敗を無くす」なども考慮した総合的な「腸活」で、より効果が期待できます。

加工度の高いたんぱく質は腸内で未消化となり、これがフェノール類*Oなどの腐敗産物を産み出し、腸から吸収され、肌の角質層に定着し、肌のターンオーバーを阻害し、シミ・シワなど様々な肌トラブルの原因の一つでもあります。特に美腸などの美容面からも、たんぱく質​の消化についても注意が必要です。

日本人は欧米人と比べ、胃酸の分泌量が少ないため、過度な加工たんぱく質の摂取は、大腸内での未消化たんぱく質(ペプチド)の原因になるばかりか、消化負担が増すことで分泌される胆汁酸が過剰化し、大腸まで届き、腐敗産物の産生を促してしまいます。

 

腐敗はpH8以上のアルカリ性で起こるため、腸内で腐敗を起こさないようにするには、pH6以下の弱酸性に保つこともとても重要です。ルミナコイドの積極的な摂取が、腸内のpHバランスの最適化につながります。

*O.フェノール、パラクレゾールなど

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さらに、健康の根幹のもう一つである血液、そして全身にそれを行き渡らせる血管の保全も重要なポイントになります。その他細胞劣化を促す「酸化ストレス」「糖化ストレス」「炎症ストレス」「情動ストレス」「重金属ストレス」を減らすことも考慮することでより効果が期待できます。

但し、このような腸活も、逆にトラブルになる人もいるので、注意が必要です。過敏性腸症候群やSIBO(小腸内細菌増殖症)など腸に疾患がある方は、医師に相談するとともに、小腸で吸収されにくい食品を避ける必要があります。FODMAPと言われる炭水化物(「F=発酵性の」「O=オリゴ糖」「D=二糖類」「M=単糖類」And「P=ポリオール(糖アルコール)」)を避け、不調の原因となる食材を見つけ出し、それを避ける必要があります。

5大ストレス
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出典:*(2) Mod Media 2014:60(10):307-311 *(3)亜鉛栄養治療 2018:8(2). , *(4)日消外会誌2003;36(7):832. , *(5) Nat Neurosci. 2012 Sep; 15(9):1211-1218, *(6)日内会誌2015: 104; 86-92. , *(7) Mod Media 2016:62(5):159-165, , *(8) Nature 10.1038/nature12721. 2013. , 農化誌2000: 74: 990-3. , *(9)Jpn J Psychom Med 2011: 51; 45−52. , *(10) Cambridge University Press, Cambridge. (1995) pp. 427-481. , Br. J. Nutr.: 58(1): 955-103, 1987. ,日油化学会誌1997:46(10): 1205-1212. , *(11) DNA Res. 2016; 23(2): 125-33. 

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